昔の小説が再人気!?「残像に口紅を」ってどんな話?

今回は筒井康隆さんの「残像に口紅を」という小説の読書感想です。
※ネタバレ含みますので、ご注意を!
なぜ再人気!?
この小説は初版発行が1989年という昔に発売された小説なのに売上が伸びているのです。
再人気のきっかけは、「アメトーク」の読書芸人で、メイプル超合金のカズレーザーさんが紹介していたことです。
私も例のごとくアメトークを観て、読んでみたいと思い図書館で予約しました。
約半年たった最近になってやっと借りることができました(;^ω^)
世界からことばが消えていく実験的長篇小説ってどんなお話なんだろう?と思ったし、
子供の頃、好きだった漫画「幽遊白書」に出てくる能力の元ネタってことも知らなかったので、興味を持ちました。
幽遊白書のファンの方には有名なことなのでしょうか??
あらすじ
主人公は神戸に住む、佐治勝男という名の人気小説家です。
美人の妻と三人の美しい娘がいます。
評論家で友人の津田得治に提案されて、言語がひとつづつ消えていく話を書くことになります。
といっているそばからすでに「あ」の音は失われていて。。。
小説家の主人公が普通に生活していく中でどんどん音が失われていくというお話です。
ネタバレ
「あ」の音が失われたので、妻は主人公のことをいつも「あなた」と呼び掛けているのだろうけれど、
その呼び方はできなくて違和感があったり。
最初になくなったのが「あ」の音だったので、五十音順で次は当然「い」の音がなくなるのだろと思っていましたが、
次になくなったのは「ぱ」だったので、無くなる音はランダムなのか、と思いました。
お話の中でもランダムだと言っていました。でも実は、作者の過去の作品の中から出現率の高い音を調べて
多少、意図的な順番で消されているのです。
「ぱ」がなくなった時点では「ぱ」が言えないので、「パン」と言えず、柔らかく胃と口に軽い、素晴らしい食べ物、などと
表現しています。
この辺までは、音がなくなっても、その音が入っている言葉がしゃべれなくなるだけ、
と思っていたのですが、
「ぬ」が消えた時、三女の絹子の存在自体が消えてしまったのです。ここで、人も消えてしまうんだ、と思いました。
物語の中で家族そろって食事をしていたのに、目の前から消えてしまったのです。
続いて「ふ」が消えると次女の文子、フォークとナイフも消えてしまったので、お箸でフランス料理を食べる羽目に。
家族全員消えてしまい存在も忘れていきます。
執筆した物語のタイトルに入っている文字が消えたことによって、作品も消えてしまいます。
音の消失と共に言葉や人物までも消えていきますが、主人公の日常は続きます。
使える言葉が少なくなっていく中でなんとか言い換えて表現しながら、講演をしたり、
食べ物も消えていく中で食事をしたり。
物語の後半では、言葉のたりない今だからいい機会と思い、自身の自叙伝を語りはじめます。
最後に残った音は「ん」
お話は、ん。 で終わります。
ん、を引けば世界に何も残らない。
以上、結末までのネタばれでした。
ジャンルとしてはSFになるのでしょうか。
物語の中で主人公と津田が、超虚構などと難しい話をしているので、言葉が消えていくのは、虚構であって現実はまた別なのか、
はたまた区別がつかなくなってしまったということなのか。
頭のあまりよくない私は、超虚構のことを考えるとドツボにハマってしまいそうになりますが、
それがSF作品ってことなのでしょうか。
消えていく音の順番もデータをとって考えて決められているようですし、よく考えられたお話という感想です。
約30年前に作られたお話なのに、新鮮で読んでいて面白かったです。
幽遊白書の元ネタって?
冨樫義博先生の「幽遊白書」アニメも観ていたし、漫画も好きでしたが、「残像に口紅を」が元ネタに使われているなんて、
カズレーザーさんが言っているのを聞くまで全然知りませんでした(^^;)
元ネタに使われているのはジャンプ・コミックスの「幽遊白書」第13巻にでてくる
蔵馬のクラスメート、海藤の「禁句(タブー)」という能力です。
彼のテリトリー内で決められた禁句を言うと魂を取られてしまうのです。
蔵馬と海藤の頭脳戦となり、蔵馬の提案で一分ごとに禁句があいうえお順に増えていくというルールになりました。
残像に口紅をの設定、確かに元ネタになっていました!
冨樫先生は今も「HUNTER×HUNTER」で人気ですが、幽遊白書も読み返してみると今でも面白いのでオススメです。
蔵馬と海藤の戦いは、残り時間わずかという所で蔵馬が変顔をして、海藤が「あはははは」と笑ってしまい、
蔵馬の勝利でした(笑)変顔は公開されず。。
その前に、後ろから「わ!」と驚かされたのを海藤はこらえていたけど、私だったら、無意識に「ぎゃ!!」と声を出してしまい
敗北だったろうな、なーんて考えたり。
筒井康隆さんの「残像に口紅を」、気になった方はチェックしてみてくださいね(*^-^*)
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。